映画「セシウムと少女」について

少し前に見た映画だが、マイナーな映画と思われるので何かの参考になればと思い、感想を書き記しておく。

この映画のタイトルは知久寿焼さんが同名のテーマ曲を作るということではじめて知ったのだが、第一印象としては「直球だなあ」ということであった。そのタイトルから想像されるのは「いかにも」な反原発であり、反原発のよしあしについてはともかく、私は音楽に政治的なイデオロギーを持ち込む行為が好きではないので、その時はそこまで興味がもてず映画を見に行くかはあやしいところであった。

ところが、この映画は主題歌の知久寿焼さんだけではなく原マスミさんもナレーションで参加しており、5月7日に知久寿焼さんと原マスミさんによる映画の公開を記念したライブが行われるというので話は変わってきた。このお2人だけで出演するライブというのは、たいていは最後がセッションコーナーであり、お2人のすばらしい競演がかなりの確率で予測されるからである。頻繁に見られるものではないので、私は東京ではなくても機会があれば可能な限り行くことにしている。それが阿佐ヶ谷ラピュタで。行かないわけにはいかなかった。

その時のアンコールで披露された「セシウムと少女」の演奏の動画がyoutubeにあったので貼っておく。www.youtube.com


セシウムと少女」は私はその時初めて聴いた。また、お2人で人前で披露するのはこのとき初めてだと思われ、めったに見られない機会でもあるけれども、シンプルな曲ながらその迫力ある演奏から映画を宣伝しようという熱意が伝わってきた。歌詞の「恥ずかしい」とは何に対してなのかなど、つい深読みしたくなるけれど、セシウムだけではなくもっと広い世界を描いている気がして抵抗は感じなかった。でも、映画にもぴったりだった。

また、ライブ開始の前に監督と主演女優さんも呼んでのあいさつがあったが、監督の才谷さんは応援したくなるたたずまいであったし、主演女優の白波瀬さんは後で映画を見たらその主役のイメージどおりの真面目そうな高校生で、ライブの会場で、夜遅くなる前に「明日は学校なので帰ります」と宣言して帰っていく姿を見かけて、どちらも好感を持った。

ライブ会場で前売り券が割引で売られていて、ユジク阿佐ヶ谷での上映時間を調べたら仕事後に寄るのにちょうどよさそうだったので、素敵なライブを企画してくれたことの感謝を込めて、せっかくだから行くことにしたのだった。

行ったのは5月半ばの平日であるが、小さな45席の映画館で、私以外に3人連れしかいなかったので快適であったが少し心配にはなった。

内容としてはセシウムの話は冒頭と後半に集中している。勉強はできるけれど融通がきかずに学校に友達のいない主人公が、ひょんなことから現代に生きる七福神と知り合い、その手助けで祖母の九官鳥探しを通じて過去の祖母に会ったり、その祖母の尊敬する詩人、北原白秋に会ったりする。セシウムの話題はその話の前後に唐突に出てくる感じではあるが、そこまで押し付けがましかったりヒステリックという「いかにも」な感じはしなかった。押し付けがましい内容ではないというのは、監督のあいさつを聞いたときにその雰囲気からなんとなく直感していたことであった。

七福神が登場するたび間にはさまれるアニメーションは、その道で有名なアニメーション作家によるものらしいが、その方面に詳しくないので、突然始まる白昼夢のような印象を受け、この映画のタイトルの直球な感じをやわらげていた。

主人公と七福神セシウムについて調査をしたり、語り合ったりしている場面から私が感じたのが「学校で浮いている真面目な女の子が反原発などの運動を通じて理解のある大人たちと知り合って、世界が広がり自分の居場所を見つけた」というストーリーであって、神様とかそういう話が関係ないとしたらだけれども、こういう見方もあったということで書いておく。

原マスミさんのナレーションは主人公が学校で浮いているなどのつらい場面でもあくまでとぼけた味があり、救いであった。最後に知久寿焼さんの主題歌が流れるのも、映画を最後まで見る大きな楽しみであり。聴くとそれだけで満足感があった。映画で使用されている音源は、知久さん以外にもミュージシャンが多数参加して作られたもののようなので、ぜひCDなどで販売してほしいと思った。

7月17日まではユジク阿佐ヶ谷での上映が決まっているそうなので、興味のある方はぜひ。
映画「セシウムと少女」オフィシャルサイト