昭和の価値観

ユニコーンの「ヒゲとボイン」という曲を久しぶりに聞いたら違和感を覚えて頭の中でループ再生が始まってしまった(私の頭の中にはしょっちゅう意図しない音楽が流れている)。面白い曲だが、歌詞の中でヒゲとボインは地位と女の象徴でもあり、ボインの同僚女性やヒゲの社長が潔いまでに類型的に描写されていて、同僚女性をボインとか言っちゃう価値観はセクハラに厳しくなかった昭和そのものであり(リリースは91年なので平成だけど)フェミニズム的に今ならあまり共感を得られなかったかもしれない。というかユニコーンは当時は若い売れっ子バンドだったのにどうしてサラリーマン哀歌みたいな曲(他にも何曲もあるし人気がある)をよく出していたんだろう。その背景はよく知らない。

プロファイリングしたら面白かった。

・時代はバブル期

・主人公はおそらく25歳前後

・ボインも同年代(言葉遣いから、主人公と大して歳は変わらない)

・社長は一回り年上の30代(「社長は若いくせしてヒゲなんか生やしちゃって」と描写されるが、「君を見てると昔の僕を見るようだ」とセリフがある)


今の価値観だと少し若い気がするが、昭和の価値観では人は今より老けるのが早かったからこのくらいの年齢なのではないか。従業員がそんなにたくさんいないお洒落な感じのベンチャー企業だと思うけど、当時のことはよく知らないので業種は不明。現代のイメージだとITとかかなあ。社長は「アメリカ帰りで独身」だそうなので、部下の女性とでも意気投合すれば交際は問題なく、そこまで年も離れていないので胸しか見てなさそうな主人公と交際するよりはよさそうである。そのあたりで勝ち目がなさそうなのが明らかにわかるのがこの歌詞の愛嬌と思われる。社長が既婚とかだともっと泥沼なんだけど(そういうのも現実社会ではありそう…)。


社長みたいに成功してヒゲを生やせばモテるとは限らないけど、この主人公の価値観を考えると10年くらいは「女にうつつを抜かすを抜かすと私のようになれないよ」との社長のアドバイスどおり頑張って仕事して、偉くなって女性にモテるようになればヒゲとボイン(地位と女)両方得られるかもしれないけど、今すぐモテたい、何か納得いかない。そんなことなんだろう。

でも女性のことを胸しか見てないんじゃ、偉くなってもモテない、もしくはお金目当ての人しか来ないのでは。で、今すぐモテるにはお金はなくとも「あなたはどうせ仕事でしょ」と言われないように仕事をほどほどにして女性にマメになればいいのかな。そんなんでモテるのだろうか。そもそもバブルは崩壊したし、今のようにとんでもない要因で不況になることもあるので、仕事を頑張ってもどうなるかはわからない。そう考えると「男にはつらくて長い2つの道が」「永遠の深いテーマ」と描写されるヒゲとボイン(地位と女)、そもそもこの主人公の妄想であり両方が道でも何でもなくただのまぼろしなのだとわかる。何だかしんみりする。


読んでわかるとは思うけど一応書いておくと、この文章は頭の中のループ再生を止めるために私の妄想をまとめたもので、ユニコーンは素晴らしいバンドです。(「ジゴロ」という曲が一番好き)。あと同名漫画はアルバムのジャケットにはなっているけどあまり歌詞と関係なさそうなので言及せず。掲載雑誌を親が昔よく買ってたけど子供には黄桜の絵の人だということ以外はピンとこなかった。